2015-06
定期報告制度:未提出のリスク
協会理事の和田です。
再三このホームページで紹介している「定期報告制度」ですが、
6年前の改正で相当に強化されているため、きちんと法律通りに
運用されているのかどうか、気になっていました。
建物が定期報告の対象であるかどうかは、ビルオーナーやビルの管理者に
手紙が届くことで、確認することができます。
これをひたすら無視し続けると、どうなるのか。
定期報告制度で違反があった場合、100万円以下の罰金がある、と法律には
書いてあります。でも、罰金の通達が乱発されているようでしたら、もっと
ニュースになってもいいはずなのに、そんな話は聞いたことがありません。
ということは、
法律だけ整備しても、制度の強制力はさほど強くない?
「報告したくない」とゴネていれば、それが通ってしまうのか?
そんな疑念も湧いてきます。
定期広告制度は建築基準法に謳われた、れっきとした国の法律ですが、
有名無実な法律だったら、意味がないのではないか。
そんな疑いもあって悶々としながら調べ物をしていたら、偶然ですが、
気になるホームページを見つけました。
広島は他の自治体と比べて、定期報告制度の対象範囲は、さほど広く
ありません。
適用範囲が狭い自治体と比べれば広いのですが、東京や大阪と比べると、
対象数はそんなに多くない自治体です。
広島市の、上記HPがすごいと思ったのは、定期報告の対象建物名を
全て実名でリストアップしていることです。
そして、過去の定期報告が提出されているか否か、履歴も閲覧できます。
こんな感じで、です。
ぼかしをかけてありますが、建物の名称、所在地、そして、定期報告の時期と
過去の報告が既出か未提出か、が明示されています。
過去の定期報告未提出、という建物もチラホラ見られます。
このリストを見て私がまず驚いたのは、対象建物の多さです。
広島市中区だけで、500近くあるでしょうか。
数だけ聞くと驚きませんが、実際にリストを見ると、
「こんなにあるんだ」と圧倒されます。
次に、建物の実名とともに、定期報告の過去の提出履歴、今後の提出時期まで
リストで明らかにされていること。
過去の定期報告を提出しているかどうか、次の定期報告の時期は
いつなのか、建物ごとに記載されています。
過去の報告が未提出であれば、それも明確に分かるようになっています。
これは、ビルオーナーやテナントにとって、大きなリスクとなります。
建物の安全性について、報告の義務を怠っていることが、公共のHPに
堂々と公開されてしまっているからです。
見る人が見れば、風評被害を被る可能性だって、大いにあります。
広島市のような例は、まだ少数だとは思いますが、定期報告の義務がある
にも関わらず、未提出でいる場合、手紙や電話での催促の他に、督促状が
送付されるなど、いくつかの段階があるようです。
再三の指摘を無視し続けるのは、逆の意味で大きなプレッシャーです。
定期報告の未提出リスクは、最初のうちは大きな罰則を受けることはない
ものの、次第に大きな圧力となって押し寄せるものと考えるべきでしょう。