2016-03

【コラム】建築基準法の改正を前向きに捉えましょう

外壁打診調査協会 理事の和田 裕です。

代表理事のあいさつにもありましたが、今年の6月、特殊建築物の
定期報告制度について謳っている、建築基準法第12条が改正されます。

変更内容は、定期報告をする義務のある特殊建築物の対象が増えることと、
いい加減な報告をした資格者への罰則が強化されることです。

たとえば、高齢者が寝泊まりする用途の施設について、これまでは
小規模な建物は報告対象ではありませんでした。

それが6月以降、2階建以上かつ300㎡以上の施設は、
全国一律で報告対象となります。

外壁打診調査事業を営む者にとっては、対象建物が増えることで
プラスと考えられますが、建物オーナーにとっては負担になるでしょう。

 

私は一級建築士ですので、これまで何度か、建築基準法改正後の変化を
体験してきました。

特に印象に残っているのは、10年前の、耐震偽装事件後の改正です。

何千人もの居住者の安全を脅かす事件であり、マスコミにも大きく
取り上げられた事件を受けての大改正だったため、建設業界へ与えた
影響は甚大なものがありました。

通常1ヶ月程度で降りていた申請許可に、一時的とはいえ数ヶ月以上の
時間がかかるようになり、建設業界の業務は滞りました。

厳格すぎる新規定が審査日数の長期化を起こし、住宅着工数が激減、
建設会社に留まらず、建材メーカーにも影響がおよび、倒産件数も増加、
「建基法不況」との言葉も生まれました。

社会的影響が大きな事件後の改正で、性急過ぎたためともいえますが、
私たち建築士、建設業界の人間は、「基準法改正」と聞きますと
苦い思いがこみ上げてくる人が多いと思います。

 

ただ、今回の改正は、10年前とは異なります。

既存建物の維持保全を目的とした基準法12条は、8年前に一度
強化されており、ざっくり言えば今回はその不備を補う意味合いが
強いようです。

決して性急な改正ではないので、大きな混乱も起きないでしょう。

建物オーナーにとっては、面倒な改正と思えるでしょうが、
「建物の安全性を定期的に見直し、行政も点検状況を把握してくれる」
機会と考え、安心感を得ることも可能ではないでしょうか。

もちろん、低コストで建物の調査を行う事業者にとっては、
ビジネスのチャンスが広がることにもなります。

ぜひ、今回の改正をポジティブに受け止めて欲しいと考えます。

建物オーナー様にも、「コスト面の負担」というネガティブな面と、
「定期的な建物の安全性確保」というポジティブな面をバランスよく
見据えて頂けると、ストレスが少ないのではないかと思われます。

 

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