News&Columns
【コラム】定期報告制度が充実しても、外壁落下事故は起こります
外壁打診調査協会 理事の和田 裕です。
先日、友人から、こんなメッセージが届きました。
「突然ですが質問。
近所のマンション、通りかかかったらタイルが落ちてきた。
見上げると、柱と梁の接合部?からタイルが剥がれてる。
これって危なくないのかな?
写真も送るね~。」
送られてきたのが、この写真です。
危なくないのかな???
どころではなく、お前が大変危ない目に遭っているではないか!
と思わず遠隔ではありますが大声で突っ込んでしまいました(笑)
この建物、築年数はごく浅いようです。
友人によると、十年どころか五年も経っていないのではないか、
とのことでした。
経年劣化より、施工不良が疑われる案件です。
私の知人の周囲でこのような事故が起き(しかもその瞬間!)、
その確率を考えると、外壁の落下事故は、全国レベルで
頻繁に起こっているのではないかと感じました。
セミナーの準備のたび、定期的に外壁の落下事故を調べている
のですが、今回も興味深い資料が見つかりました。
次回に続きます。
【コラム】労働安全衛生規則改正で「ロープ高所作業」が変わる?
先日、知人の紹介で、ある大手建設会社さんを訪問し、「ロープによる外壁打診調査」の
説明をして参りました。
営業活動、にはならないのですが、「ロープ打診」がいかに効果的か、そしてコスト
競争力を有しているかを多くの人に知って頂く活動を続けています。こうすることで、
打診業界の裾野が広がっていく、と考えてのことです。
私は大学の建築学科を出ているので、建設会社に勤める同期の友人がたくさんいます。
しかし、建設会社に勤めているからと言って、外壁打診調査に興味を持ってくれる人は
残念ながらまだ、それほど多くはない状況。リノベーション需要が盛り上がってきている
とは言え、どうしても建設会社としては、新築や増改築のほうに力が入りますからね。
ましてやテーマが「調査」となると、トーンが二段階くらい下がるイメージです(笑)
今回は幾度かのチャレンジの末、面会のアポイントメントを取ることが出来ました。
相手先の方は、法12条の定期報告制度や打診調査のことを理解されていたので、話題を
ロープ打診の特徴と実績に絞ることができ、有意義な時間を過ごすことができました。
さすがに話の伝わり方が早く、ロープ打診のコストやスピードの優位性については、
すぐに理解して頂けました。世の中に外壁調査の手法は色々あり、それぞれ長所短所が
ありますが、ロープ打診にも、もちろんメリットとデメリットがあります。
メリットをアピールするだけでなく、デメリットにどんなものがあって、どう克服
しているのか、そして膨大なデータをどうスピーディーにまとめているのか、
なども全て正直にお伝えしました。
その中で、ロープ打診の手法が企業のコンプライアンス上、問題にならないか、という
テーマに話題が振れました。ライフライン(安全綱)があるとはいえ、ロープ一本で
屋上からぶら下がって行う調査ですから、第3者の目には危険極まりない作業に映ります。
ロープ高所作業による打診調査を、クライアントさんにお勧めすることが法令に違反
することになったりはしないのか。安全管理上、ロープ打診を選択することが、企業に
とって問題にならないのか。多くの顧客を抱える企業の方としては当然、気になる
ポイントであったわけです。そこで私は、7月1日から適用される労働安全衛生規則の
改正について、お話ししました。
念のためにここで規則改正の内容を書いておきます。
ガラス清掃や外壁調査の際に、ロープブランコを利用することを「ロープ高所作業」
といいますが、ロープ高所作業での墜落防止対策が最近、新たに法令化されました。
平成28年7月1日以降、ロープ高所作業者は「特別教育」の受講が、労働安全衛生規則の
改正によって義務化されたのです。
この改正によりロープ高所作業は、「特別教育」を受講することで、労働安全衛生規則に
則った作業手法となるわけです。
労働安全衛生規則の話は、ロープ高所作業の安全性に不安を抱えていた相手先に
とって、安心材料となったようでした。ロープ技術者や技術者団体各自が、自己流で
安全性を確保していた作業に対し、厚生労働省が共通の基準を作って遵守を促すように
なったことの意味は、私たちが想像するよりも大きいようです。
これまでの私の経験では、大手企業の方や官公庁の方にロープ打診を説明するケースで、
今回の労働安全衛生規則改正は説得力があったように感じています。
規則自体は「特別教育を受ける」というもので、面倒に感じた人もいるかも
しれませんが、前述のように社会的には大きな意義があります。
特別教育の内容を踏まえ、安全第一でロープ打診に取り組んで頂きたいと思います。
【コラム】建築基準法の改正を前向きに捉えましょう
外壁打診調査協会 理事の和田 裕です。
代表理事のあいさつにもありましたが、今年の6月、特殊建築物の
定期報告制度について謳っている、建築基準法第12条が改正されます。
変更内容は、定期報告をする義務のある特殊建築物の対象が増えることと、
いい加減な報告をした資格者への罰則が強化されることです。
たとえば、高齢者が寝泊まりする用途の施設について、これまでは
小規模な建物は報告対象ではありませんでした。
それが6月以降、2階建以上かつ300㎡以上の施設は、
全国一律で報告対象となります。
外壁打診調査事業を営む者にとっては、対象建物が増えることで
プラスと考えられますが、建物オーナーにとっては負担になるでしょう。
私は一級建築士ですので、これまで何度か、建築基準法改正後の変化を
体験してきました。
特に印象に残っているのは、10年前の、耐震偽装事件後の改正です。
何千人もの居住者の安全を脅かす事件であり、マスコミにも大きく
取り上げられた事件を受けての大改正だったため、建設業界へ与えた
影響は甚大なものがありました。
通常1ヶ月程度で降りていた申請許可に、一時的とはいえ数ヶ月以上の
時間がかかるようになり、建設業界の業務は滞りました。
厳格すぎる新規定が審査日数の長期化を起こし、住宅着工数が激減、
建設会社に留まらず、建材メーカーにも影響がおよび、倒産件数も増加、
「建基法不況」との言葉も生まれました。
社会的影響が大きな事件後の改正で、性急過ぎたためともいえますが、
私たち建築士、建設業界の人間は、「基準法改正」と聞きますと
苦い思いがこみ上げてくる人が多いと思います。
ただ、今回の改正は、10年前とは異なります。
既存建物の維持保全を目的とした基準法12条は、8年前に一度
強化されており、ざっくり言えば今回はその不備を補う意味合いが
強いようです。
決して性急な改正ではないので、大きな混乱も起きないでしょう。
建物オーナーにとっては、面倒な改正と思えるでしょうが、
「建物の安全性を定期的に見直し、行政も点検状況を把握してくれる」
機会と考え、安心感を得ることも可能ではないでしょうか。
もちろん、低コストで建物の調査を行う事業者にとっては、
ビジネスのチャンスが広がることにもなります。
ぜひ、今回の改正をポジティブに受け止めて欲しいと考えます。
建物オーナー様にも、「コスト面の負担」というネガティブな面と、
「定期的な建物の安全性確保」というポジティブな面をバランスよく
見据えて頂けると、ストレスが少ないのではないかと思われます。
ニーズ型ビジネスと、ウォンツ型ビジネス(その2)
前回、ビルメン業界は、定期的に必要なサービスを提供しているので、
ニーズ型の模範的なビジネス、と書きました。
ただ、ニーズ型ビジネスの悩みは、競合が多くなること。
ビルメン業界も例外ではなく、同業他社との価格競争で、業務単価の
ディスカウントが生じています。
またさらに問題なのは、昨今のデフレ傾向で、人々がビルメン業界の
サービスを必要とする頻度が減少傾向にあることです。
週に3回で契約していた清掃業務を、週2回に減らされる。
月に2回だったはずの点検業務が、月に1回でと言われて減額交渉。
安定したニーズ型ビジネスであるが故の、悩みとも言えます。
ニーズ型ビジネスで価格競争を避け、発展を続けるには?
それは、競合のないところで勝負することです。
競合の少ない分野に事業を広げるか、サービスの質を圧倒的に
向上させるか、のいずれかになります。
ここで、当協会がビルメン業界の新たなメニューに、と提案している
外壁打診事業の性質を見てみましょう。
外壁打診事業では、法律で「十年に一度は全面打診をする」ことが
定められています。打診のサービスは、十年に一回必要とされます。
デフレ下においても、法律の定めにより、その回数は変わりません。
また現在、ロープブランコによる外壁打診事業に積極的に取り組んでいる
業者は、まだまだ少ない状況です。安価な全面打診調査の方法として、
ブランコを利用する工法は圧倒的に優位にありますので、価格設定を
考える上でも、無理なディスカウントをする必要はありません。
外壁打診事業は、ニーズ型の事業としては件数が安定していますし、
これからも依頼はもっと増えるでしょう。価格の比較対象も、赤外線や
足場工法など別業界となりますので、業界内で角逐する必要が
ありません(同じ業界で価格競争するのは、避けたいですよね)。
ストレスなく、安心して事業に取り組むことが出来るという利点も
外壁打診事業にはあります。ポジティブな気持ちで仕事できる点も、
この事業の魅力ですので、興味のある方はぜひ取り組んでみて下さい。
ニーズ型ビジネスと、ウォンツ型ビジネス(その1)
外壁打診調査協会 理事の和田 裕です。
先日、とあるビジネスセミナーに参加してきました。
色々な業種のビジネスマンが集まるセミナーだったのですが、
顧客をどう集めるか、というマーケティングに関する内容が
充実していました。
その中で私が興味を持ったのが、セミナー講師の次の言葉でした。
「世の中には、ニーズ型ビジネスと、ウォンツ型ビジネスがある」
「自分のビジネスがどちらに該当するのかを分析し、それぞれの
ビジネスに合った形で、集客の戦略を練る必要がある」
ニーズ型(必要型)は、必要に迫られて買う商品を扱うものであり、
ウォンツ型(欲求型)は、なくても困らないが、人によっては非常に
欲しいというたぐいの商品(サービス)を扱うもの。
食べ物で言いますと、お米やパンを扱う商売はニーズ型、霜降り肉
など高級食材を扱う商売はウォンツ型の性質が強いです。
またクルマで言いますと、営業に必要なライトバンはニーズ型、
スピードやスタイルを楽しむオープンカーはウォンツ型です。
ここまで聞いていて、ビルメン業界のメニューは、ウォンツ型より
ニーズ型の性質の方が強いのではないかと思いました。
ビルやマンションをきれいに保つのに必要だから、ビル清掃の
需要が起こるわけで、より高級で特殊なサービスでない限り、
「是が非でも、○○社のサービスが欲しい」とはなりづらい。
また、そのセミナーの参加者には、独立志向の高いサラリーマンも
多く含まれていたので、こんな言葉も講師が言っていました。
「独立して新規事業に取り組むなら、ニーズ型の方が、ビジネスが
安定するまでの期間が、短く済みますよ。
ただし、世の中には同じことを考える人がたくさんいるので、
同業との競争も発生しやすい。低コスト化や、事業の多角化など
常に先を考えて行動する必要もあります。」
この言葉も、深く納得できました。
人に「欲しくてたまらない」と思わせるような商品を考えるのは大変
ですが、人が毎日、毎週、毎月必要なものを扱えば、買ってくれる人を
見つけさえすれば、商売が成り立ちます。
ビルメン業界は、定期的に必要とされる清掃サービスを提供している
のですから、ニーズ型の模範的なビジネスであると言えるでしょう。
気になるのは、後半の「同業との価格競争」です。
次回、外壁打診事業と絡めて、ニーズ型ビジネスの発展について考えます。
(7月18日更新予定)
法改正により、定期報告制度が変わります
外壁打診調査事業セミナーに参加頂いた方には、
セミナーのタイミングで、最新の情報をお伝えしていますが、
実は昨年、建築基準法の、定期報告制度に関する部分の改正が
閣議決定され、来年から施行となります。
改正内容の一部に、「建築物調査員」という新しい資格制度が
含まれています。
定期報告を各自治体に提出するのは、1級建築士、2級建築士、
そして「特殊建築物等調査資格者」の名義で行う仕組みです。
来年以降、「特殊建築物等調査資格者」の資格はなくなり、
新たに設けられる「建築物調査員」に入れ替わる予定です。
「えー、『特殊建築物等・・・』の資格、もうなくなるの?
資格取り直しかよ~。だまされた~」
と心配する人もいるかもしれませんが、ご安心を。
既に「特殊建築物等調査資格者」の人は、自動的に
「建築物調査員」となるので、新たな講習を受ける必要はありません。
特殊建築物等調査資格者に、こんなお知らせが届いているはずです。
書面に書いてあるように、新たな講習を受ける必要はありませんが、
新しい資格証の交付を受ける必要があるようです。
来年以降の改正は、定期報告の対象建物が増加するという
外壁打診業界にとってはプラスの側面もあります。
「いちいち調べるのが面倒くさい」という方は、
再来週に開催の外壁打診調査事業セミナーに
ぜひ参加して下さい(残席わずかです)。
この事業の面白さがより深く伝わるよう、セミナー内容を
リニューアルしてお待ちしております。
定期報告制度:未提出のリスク
協会理事の和田です。
再三このホームページで紹介している「定期報告制度」ですが、
6年前の改正で相当に強化されているため、きちんと法律通りに
運用されているのかどうか、気になっていました。
建物が定期報告の対象であるかどうかは、ビルオーナーやビルの管理者に
手紙が届くことで、確認することができます。
これをひたすら無視し続けると、どうなるのか。
定期報告制度で違反があった場合、100万円以下の罰金がある、と法律には
書いてあります。でも、罰金の通達が乱発されているようでしたら、もっと
ニュースになってもいいはずなのに、そんな話は聞いたことがありません。
ということは、
法律だけ整備しても、制度の強制力はさほど強くない?
「報告したくない」とゴネていれば、それが通ってしまうのか?
そんな疑念も湧いてきます。
定期広告制度は建築基準法に謳われた、れっきとした国の法律ですが、
有名無実な法律だったら、意味がないのではないか。
そんな疑いもあって悶々としながら調べ物をしていたら、偶然ですが、
気になるホームページを見つけました。
広島は他の自治体と比べて、定期報告制度の対象範囲は、さほど広く
ありません。
適用範囲が狭い自治体と比べれば広いのですが、東京や大阪と比べると、
対象数はそんなに多くない自治体です。
広島市の、上記HPがすごいと思ったのは、定期報告の対象建物名を
全て実名でリストアップしていることです。
そして、過去の定期報告が提出されているか否か、履歴も閲覧できます。
こんな感じで、です。
ぼかしをかけてありますが、建物の名称、所在地、そして、定期報告の時期と
過去の報告が既出か未提出か、が明示されています。
過去の定期報告未提出、という建物もチラホラ見られます。
このリストを見て私がまず驚いたのは、対象建物の多さです。
広島市中区だけで、500近くあるでしょうか。
数だけ聞くと驚きませんが、実際にリストを見ると、
「こんなにあるんだ」と圧倒されます。
次に、建物の実名とともに、定期報告の過去の提出履歴、今後の提出時期まで
リストで明らかにされていること。
過去の定期報告を提出しているかどうか、次の定期報告の時期は
いつなのか、建物ごとに記載されています。
過去の報告が未提出であれば、それも明確に分かるようになっています。
これは、ビルオーナーやテナントにとって、大きなリスクとなります。
建物の安全性について、報告の義務を怠っていることが、公共のHPに
堂々と公開されてしまっているからです。
見る人が見れば、風評被害を被る可能性だって、大いにあります。
広島市のような例は、まだ少数だとは思いますが、定期報告の義務がある
にも関わらず、未提出でいる場合、手紙や電話での催促の他に、督促状が
送付されるなど、いくつかの段階があるようです。
再三の指摘を無視し続けるのは、逆の意味で大きなプレッシャーです。
定期報告の未提出リスクは、最初のうちは大きな罰則を受けることはない
ものの、次第に大きな圧力となって押し寄せるものと考えるべきでしょう。
定期報告制度への、素朴な疑問(その2)
Q:費用もかかるが、定期報告をやる意味があるのか?
この素朴な問いをテーマに、前回よりコラムを書いています。
今回はその続きです。
定期報告の意味、目的って何でしょうか?
上の問いに対する、大阪建築防災センターの回答は以下となります。
について、専門知識を持った人に定期的に見てもらう必要があります。
万が一、建築に係る事故等が発生した場合、定期報告の有無及び
その内容は重要な資料となります。
外壁が劣化して一部が落下すると、ビルの使用者や通行人の安全を脅かします。
事故が起きたら、その全責任はオーナーにあります。
ただ、市街地を安全な環境に保つ役割・責任は、個々の建物オーナーだけで
なく、建設計画を事前にチェックする立場にある行政にも、あるはず。
なので、ビルの劣化を建物オーナーだけの責任でモニターするのでなく、
行政も、監督責任の一翼を担うべく、定期報告制度によって建物の状態を
把握しようとしているのです。
論理を飛躍させれば、こうなります(私の解釈ですが)。
建物の老朽化による事故は、確かに建物オーナーの自己責任かもしれない。
でも、突発的な事故もあるし、マジメに調査している人もいるだろう
から、自己責任だけで片づけるのは酷だよね。
ちゃんと定期報告してくてくれれば、たとえ事故が発生しても、行政が
「この人は、ちゃんと調査して報告してました。
ですから今回の事故は、やむを得ない突発的な事故と判断します」
との、お墨付きを与えますよ。
完全な免責にはならないけど、情状酌量に有利に働くかもしれないね。
と、わざわざ行政が、オーナー自己責任のはずのビル劣化に、関与して
くれようとしているのです。
そう考えると、有り難いではありませんか。
外壁落下の事故で、万が一通行人にケガでもさせてしまったら、ビルオーナーや
テナントのイメージダウンは避けられません。
NHKクローズアップ現代で扱われた札幌の事例では、
ビルを所有する飲食店の社長が、平謝りしているシーンが全国に流されました。
このような事態を招くことは、企業にとって、大きなリスクとなります。
ビルの劣化は避けられないことですが、定期報告で安全性をチェックして
いれば安全対策になるし、決して「安全対策を怠った」のではないことを
証明してくれることになります。つまりリスク回避策になるということ。
ですから定期報告の目的は、
1.事故を未然に防ぐため、建築物の安全性について定期的に専門家の
チェックを受けること、を奨励すること
そして、
2.万が一事故が起きた場合、やむを得ない突発的な事故かどうかを
判断する資料として、定期報告書を用いること
(ちゃんと提出していれば、安全点検していた証拠が残る)
の、2点に集約されると考えられます。
定期報告は面倒な手続きにはなりますが、外壁落下の事故を避け、事故が
起きたとしても、過失の割合が少ないことを証明してくれるものなのです。
定期報告制度への、素朴な疑問(その1)
外壁打診調査協会・理事の和田です。
大型連休も終わり、いよいよ大阪でのセミナーが近づいて参りました。
今回のセミナー企画を控え、関西方面での「定期報告制度」実施状況を
関係する官公庁へ、事前に問い合わせてみました。
基本的には、東京とほぼ同じ基準で実施されていることが確認できました。
なので、今東京方面で外壁全面打診の需要が増している状況と同じ現象が
関西方面でも起こることは、ほぼ確実と言っていいでしょう。
ところで、大阪市の定期報告制度の提出先である、大阪建築防災センターの
ホームページを閲覧したところ、面白いQ&Aを見つけました。
定期報告制度に対する素朴な疑問に答えているのですが、
なんともリアルで、生々しいやりとりが、そこにありました(笑)。
何度かに分け、幾つか見ていきましょう。
まずは、一番ストレートで面白かった質問から。
Q:費用もかかるが、定期報告をやる意味があるのか?
・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・そうですよね。
この質問のモデルになった、大阪の方の気持ち、よくわかります。
建物の痛み具合について、わざわざお金を掛けて報告書を提出する。
「大きなお世話だ」「自己責任でやるよ」とも言いたくなります。
さらに、ただ報告するだけにしては、
「10年に一回は外壁を全面打診せい!」など、ずいぶん大がかりな要求もある。
そこまでしてやる必要が、果たしてあるのか?
もっともな疑問です。
単刀直入に言うと、必要です。
自治体によって対象の建物・規模が異なりますが、建物が対象とされた場合、
全国一律で、定期報告することが法律で義務づけられています。
要するに、定期報告書提出の要請が建物オーナーさんに届いたら、
何人たりとも、報告書の提出からは逃れられない、ってことなんですね。
法律で決まった、お上のお達しなもんですから、抜け道はほぼ、ない。
「うちの県なら」「うちの市なら」と特例を探したくもなりますが、
その手は通用しなさそう。
実際、大阪建築防災センターさんに、抜け道がないかどうかあれこれ聞いて
みましたが、定期報告も外壁全面打診も、抜け道はありませんでした。
では、質問にある「定期報告の意味」って何なのでしょうか。
次回は、それを考えてみたいと思います。
切羽詰まってからでは遅い?
協会理事の和田です。
私は一級建築士として住宅やマンションの設計をしております。事務所は
横浜ですが、数年前、近所の分譲マンションが大規模修繕の時期を迎えました。
関連業種なので、所有者から管理組合の集まりに参加するよう要請され、
修繕までの一部始終を目の当たりにしました。
不足気味の予算の使い方に色んな意見が集まり、話はなかなかまとまらず、
何年もの時間を要しました。
根拠はないものの説得力がなぜかあったのが、以下の居住者さんの意見です。
「ウチのマンションはキレイだし、まだまだ大丈夫」
→見た目よりも、見えない痛みがヤバイのに・・・
「工事中に監督も『このマンションはしっかり工事しているから大丈夫ですよ』
って言ってたから平気なんですよ」
→そりゃ、監督もそう言うしかないでしょう・・・
確かに、そのマンションは交通量の多い場所の割に、外観がキレイでしたが。
すったもんだが続いて嫌気が差してきた頃、ある日「大規模修繕工事計画推進」
で全員一致となる、きっかけとなる事件がありました。
「外壁のタイル剥落」事件です。
居住者の皆さんがよく通る、非常にわかりやすいところに、2枚のタイルが
落ちて割れていました。
「さすがにこれは危ない」と理事会の意見がまとまり、長年の懸案だった
大規模修繕が実現したのです。
いいタイミングでタイルが剥がれたことで、めでたく修繕話が進んだ、
と思ってしまいがちですが、これは、危機感を抱くのが遅すぎた、
と見るべきでしょう。
居住者や、通行人の上に落ちていたら、軽症では済まされません。
人を傷つけるだけでなく、補償問題にもなります。
企業や公共の建物であったなら、企業や自治体のイメージを大きく損ないます。
先日の札幌での看板落下事件では、企業トップが記者会見を開いて
公式に謝罪しましたが、一時的にせよイメージダウンは避けられません。
これまで、当協会の外壁打診調査事業者、打診調査士は多くの建物を調査して
いますが、驚くほど多くの「不適」箇所が各建物から指摘されています。
特に、竣工後、外壁修繕等から10年経過した建物は、
建物のどの部分からタイルや外壁が落下しても、おかしくない状態
であると言えます。
「切羽詰まってから、修繕しよう」には、多くのリスクが潜んでいます。
特に危険な箇所には「部分補修」という手段もありますので、
「建物の経年劣化」に思い当たる節のある方、まずは外壁打診調査を
受けてみてはいかがでしょうか。
当協会の事業者、調査士なら、足場をかけるケースよりも格段に安価で
調査をすることが可能です。