定期報告制度への、素朴な疑問(その2)

Q:費用もかかるが、定期報告をやる意味があるのか?

この素朴な問いをテーマに、前回よりコラムを書いています。
今回はその続きです。

定期報告の意味、目的って何でしょうか?

上の問いに対する、大阪建築防災センターの回答は以下となります。

A:事故を未然に防ぐため、外壁・避難路など建築物の防災上の性能
について、専門知識を持った人に定期的に見てもらう必要があります。
万が一、建築に係る事故等が発生した場合、定期報告の有無及び
その内容は重要な資料となります。

外壁が劣化して一部が落下すると、ビルの使用者や通行人の安全を脅かします。
事故が起きたら、その全責任はオーナーにあります。

ただ、市街地を安全な環境に保つ役割・責任は、個々の建物オーナーだけで
なく、建設計画を事前にチェックする立場にある行政にも、あるはず。

なので、ビルの劣化を建物オーナーだけの責任でモニターするのでなく、
行政も、監督責任の一翼を担うべく、定期報告制度によって建物の状態を
把握しようとしている
のです。

論理を飛躍させれば、こうなります(私の解釈ですが)。

 

 

建物の老朽化による事故は、確かに建物オーナーの自己責任かもしれない。

でも、突発的な事故もあるし、マジメに調査している人もいるだろう
から、自己責任だけで片づけるのは酷だよね。

ちゃんと定期報告してくてくれれば、たとえ事故が発生しても、行政が

「この人は、ちゃんと調査して報告してました。
ですから今回の事故は、やむを得ない突発的な事故と判断します」

との、お墨付きを与えますよ。

完全な免責にはならないけど、情状酌量に有利に働くかもしれないね。

 

 

と、わざわざ行政が、オーナー自己責任のはずのビル劣化に、関与して
くれようとしているのです。

そう考えると、有り難いではありませんか。

外壁落下の事故で、万が一通行人にケガでもさせてしまったら、ビルオーナーや
テナントのイメージダウンは避けられません。

NHKクローズアップ現代で扱われた札幌の事例では、
ビルを所有する飲食店の社長が、平謝りしているシーンが全国に流されました。
このような事態を招くことは、企業にとって、大きなリスクとなります。

ビルの劣化は避けられないことですが、定期報告で安全性をチェックして
いれば安全対策になるし、決して「安全対策を怠った」のではないことを
証明してくれることになります。つまりリスク回避策になるということ。

ですから定期報告の目的は、

1.事故を未然に防ぐため、建築物の安全性について定期的に専門家の
     チェックを受けること、を奨励すること

そして、

2.万が一事故が起きた場合、やむを得ない突発的な事故かどうかを
     判断する資料として、定期報告書を用いること
     (ちゃんと提出していれば、安全点検していた証拠が残る)

の、2点に集約されると考えられます。

定期報告は面倒な手続きにはなりますが、外壁落下の事故を避け、事故が
起きたとしても、過失の割合が少ないことを証明してくれるものなのです。

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